研究概要 |
1.覚醒時の研究:(1)室温に放置したセンサを装着した初期には、真の皮膚温より測定値は低く、その後センサが装着部から熱を奪い真の皮膚温に近付くのではないか、(2)導線からの熱伝導により真の皮膚温より低い測定値がえられるのではないか、(3)装着に際しテープ等で覆うことにより欝熱が生じ、測値は経時的に上昇するのではないか、等の測定上の誤差を心理学的研究場面で検討するために、健常な女子94名について、6部位の皮膚温・室温を30秒毎に正味約40分経時的に測定した。その結果(1)全測定期間の平均は、額:34.45±.03,手掌:33.66±.67,手背:32.86±.28,膝:32.61±.16,前腕:31.81±.28,足底:28.83±.98;室温22.74±.02℃で、(2)手背・膝・手掌は測定開始初期に測定値の上昇がみられたが、それ以外では初期上昇はみられず、特に前腕・足底では有意な下降がみられた。これらの結果から、熱容量の小さなセンサで細い導線を用い、適当な方法で装着する限り、(1)室温に放置したセンサを装着することによる誤差、(2)熱伝導による誤差、(3)欝熱による誤差は無視できよう。(4)室温の変動は僅かでも、額・膝を除く皮膚温との相関は高く、室温の統制には一層の留意を必要とする。 2.睡眠時の研究:睡眠中の直腸温変動について平均像、個人差をみた。最低温を示す時刻は明け方付近で多くみられるが、入眠時付近での谷も約1/5例にみられた。最低温と起床時との温度差は0.6℃未満あった。一晩の直腸温の振幅は0.2〜1℃の幅で変動した。また直腸温と皮膚温との関連をみると、皮膚温は直腸温より1〜2℃低く、変動幅が大きかった。しかし皮膚温は、環境温、睡眠姿勢、寝具の状態による影響を受けており、それらのために睡眠中の真の皮膚温を推定することは困難であった。
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