研究概要 |
被験者の認知構造(表象的認知)と刺激の構造や長さ(知覚的認知)が,パフォーマンスとしての反応時間や反応の精度にどのような交互作用を及ぼすかを分析するために,旋律刺激の構造および長さを変数とし, 反応としては旋律の記譜再生, 特定音の検索, 打〓などを用い, 被験者の音楽的知識や刺激との関連を分析した. その結果, 1)特定音の検索については, 旋律記憶力が平均以上の被験者については,約7音までの長さでは検索反応時間は規則的に増大するが,旋律記憶力が平均以下の被験者については, 目標音の位置が,旋律の初頭あるいは後尾にあるときにのみ規則性がみられた. 2)旋律の記憶範囲の測定を記譜法により行うと, 旋律の調性の有無と被験者の音楽学習経験年数の交互作用がみられ, 再生水準は音楽専攻大学生の約90%から, 学習経験平均4年の10%まで著しく変化した. 3)ある音を与えてそれともっとも類似した音を作りなさいという教示のもとに行ったオクターブ調整実験では,被験者20名の中で音楽歴10年以上の1名だけが成功し, 類似した音として調整した. 自己および他者意識についての表象的認知構造の分析については,現在まで主として他者意識尺度の分析を進めてきたが,その結果,他者意識の構造は「他者の内面への意識・関心」, 「外面への意識関心」および「他者への空想的関心」の3つの因子より構成されていることが明かになった. このうち特に「他者の外面への関心」は公的自己意識とのみ相関し「他者の内面への関心」はLennoxらによるセルクモニターリング改訂尺度の「非言語的情報の認知・解読能力」因子と高い相関のあることがわかった. これらの情報認知におけるパフォーマンスとの関連については現在分析中である. 知覚的認知についてはポンゾ錯視と注意との関連が分析された.
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