本年度は前年度におこなッた統計調査のデ-タを分析すること、インタビュ-結果をある枠組みに従って整理すること、これらの実態分析を従来の理論的研究と突き合せることを行なった。 職業特性については、肉体労働・非肉体労働・専門職・非専門職といった二分法から、情報処理、対人関係、技術という3次元のそれぞれにおいて当該職業がどのような位置を占めているかを把握する方法が提唱されてきているが、この新しい方法の有効性はある程度確められた。すなわち、この把握の方法で各職学をとらえた場合に意識などに差がみられるということである。しかし、この3次元で充分かというと若干問題があり、単調さや自律性の程度も考慮に入れる必要があることがデ-タから示唆されている。 職業特性と価値観・意識との関連はある程度みられた。そして、職業構造は大きく変動しつつあるのであるから、価値観や意識もそれに伴って大幅に変化することが予想される。しかし、価値観や意識は、たとえそれが職業に関連する意識であっても、職業構造の変化とは独立の他の要因(たとえば高学歴化、都市化など)によって変化する部分が大きく、職業構造の変部に伴う価値や意識の変化を検出することは容易ではなかった。したがって、今後は価値のどの側面の社会変動のどの側面と対応するかを研究することが必要となる。価値形成における職業の重要性は若干低下するかもしれないからである。
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