各種職業従業者の価値観について、聞きとり調査と調査要による調査とを行った。その結果によると、価値観のすべてが職業と強いつながりを示すわけではなく、強い関連を示す価値観の領域と、弱いつながりしか示さない領域とがみられた。何んのために働くかといった職業観や金銭観、社会的上昇志向などは職業による差が顕著にみられ、人間観や家族観などは差が明確でなかった。職業によっても差がみられ、専門的職業や職人的な仕事に従事するものでは職業と価値観とのつながりが比較的強いが、同じように強いつながりを示す管理、経営者とは別種のつながりかたを示した。 このような職業と価値観とのつながりは過去と比較すると弱くなっているようである。しかし、一部の職業、たとえばベンチャ-・ビジネスの経営者などにおいては、価値観とのつながりが非常に強くみられた。生活に占める職業生活のウェイトが全体的には弱化しつつあることを背景として、価値観が職業以外の要因の規制を強く受けるようにりつつあるが、一部では特徴的な価値観をもつ人が新しく生まれた職業に多くみられるという現象もあった。職業の変化と考えあわせると、今後、価値観との関係の弱い多くの職業と、価値観と強く関連する少数の職業とに分化することが予想される。 これら職業と価値観のつながりは、いわゆる職業的社会化によるものと、特定の価値観をもったものが特定の職業を選択することによる部分とがあると考えられるが、今回の研究ではそれらを明確に分けて折出することはできなかった。
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