研究概要 |
大都市の衰退と再生に関する都市社会学的課題を, (1)現代日本の大都市と1960年代以降大都市衰退化=インナーシティ問題を抱えている欧米の大都市, とくに合衆国北東部の大都市を比較分析する形で理論的, 実証的に検討を加え, (2)次いで日本の大都市として東京, 関西三都(京都, 大阪, 神戸)福岡の各都心および外周のインナーシティ地域を調査対象として重点的に取り上げた. 欧米と日本では大都市衰退化=インナーシティ問題の発現と認識, 過程を異にするが, とくに大阪・神戸では人口減少, 高齢化, 産業構造の転換等の問題群をインナーシティ地域に抱えてきており, 例えば人口減少のメカニズム解明, あるいはコミュニティ機能を維持するかたちでの市街地再開発が具体的に問われてきている. 本研究では「人口の定着する」都心およびインナーシティ地域とは何かを共通の問題意識として, 調査対象地の資料収集とヒヤリング, 並びにアンケート調査を実施した. そしてこれらの予備的調査の結果を知見として, 東京の都市およびインナーシティ地域を対象に永年居住層としての町内合等のリーダー, 一般住民の生活歴と意識様態に関する重点的ヒヤリングと面接調査票にもとづく調査を試みた. 東京の都心としては千代田, 中央, 港の都心3区を中心にしたが, 欧米および関西三都との比較という意味もあって, 人口減少, 高齢化, 地域管理能力の喪失等の問題即を抱えているインナーシティ地域, 具体的には中央区佃・月島, 港区大門, 三田2丁目, 品川区北品川, 台東区谷中, 池之端, 千代田区神田三崎町, 司町, 墨田区京島, 豊島区東池袋, 板橋区本町をとりあげ, さまざまの社会的知見か明らかにされた. さまざまの意味での異質・多様性を許容して相互に折り合いなから共に築く洗練された新しい共同生活の規範・スタイルのコミュニティ定義と併せて, 中心市街地に適合的な「ネットワーク型居体」との都心型居住形態についても明示された.
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