研究課題
最終年度である本年度は、対象児の指導の継続ならびに補充デ-タの収集を行った後、研究成果とりまとめを行うに当っての対象児ならびに経過資料の最終検討を行った。その結果、集団場面で集められたデ-タを共通させたうえ、言語・コミュニケ-ション行動を以下の諸側面から分析して知見を探ることとした。自閉症状をもつ精神遅滞児の言語・コミュニケ-ション行動のうち、とり上げた諸側面とそこでの主な知見は以下の通りである。1.音声言語のない児童の授業場面におけるコミュニケ-ション行動を分析した結果、40秒に1回程度、教師との間に生じており、教師によっても交渉のあり方が異なること等が示された。2.質問に対する応答を分析した結果、応答に関する指導者の援助には、対象児に対する注意喚起と応答を促すための援助の二種が見出された。3.数概念学習場面における指示・説明を検討した結果、具体物による教材が媒介することにより、言語的交渉が成立・進展しやすいことが判明した。4.音声言語のない特殊学級児童の授業への参加と教師行動との関係を分析した結果、教師の非音声行動のうち、特に教材の提示が授業参加に与える影響の大きいことが明らかとなった。5.自閉症状の顕著であった幼児の保育経過ならびに個別指導と遊び場面を分析したところ、個別場面からコミュニケ-ションの著しい改善が認められ、集団場面に介入した後に、対人交渉の改善も進展したことが示された。そこでの指導法の意義が考察された。以上の5論文を成果として、報告書を作成した。