研究課題
一般研究(B)
本研究の目的は、自閉症状をもつ精神遅滞児の集団場面における言語・コミュニケ-ション行動を分析し、実践への示唆を得ることである。最終的に5編の論文にまとめられた本研究の主な成果は次の通りである。1.音声言語のない自閉児の養護学校授業場面におけるコミュニケ-ションの行動を分析の結果、教師との相互交渉の長さと数が教師間で異なり、コミュニケ-ション機能と意味の違いがこの差異に反映していた。2.質問に応じることを指導するために有効な援助方法を分析した結果、集団指導場面で行われている援助は二種に分けられ、一つは注意を喚起しようとするものであり、もう一つは「答え方」の援助であった。3.時間の概念に関する集団学習場面における指導者・対象児間の言語行動を意思の疎通の観点から考察した結果、適切な具体物が存在することによって、両者の意思疎通が促され、指示理解も促進される。4.音声言語のない自閉児の小学校特殊学級授業場面における授業参加度と教師の行動との関連を検討した結果、授業への参加を左右する要因に教師の非音声行動があり、なかでも教材提示の有無が大きな影響を及ぼすことが示唆された。5.自閉症状が顕著であった障害幼児について、保育経過ならびに個別指導と遊び場面の変容を分析した。その結果、個別指導場面からコミュニケ-ションの著しい改善が始まり、集団場面への介入が行われて以降から、対人交渉や遊びの変容も認められた。自然な指導環境を重視する言語指導法が効果的であったが、対人交渉の変容には、さらに交渉を促す指導が必要であることが明らかになった。