研究課題/領域番号 |
62450043
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
篠原 徹 国立歴史民俗博物館, 民俗研究部, 助教授 (80068915)
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研究分担者 |
サトウ シュン 筑波大学, 歴史人類系:助教授
上野 和男 国立歴史民俗博物館, 民俗研究部, 助教授 (80062008)
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キーワード | 亜熱帯 / 落葉広葉樹林 / 自然 / 民俗認識 / 自然観 |
研究概要 |
今年度も前年度に引きつづき二つの典型的に異なる環境、亜熱帯林に位置する沖縄県八重山郡竹富町黒島と落葉広葉樹林帯(通称ブナ帯)に位置する山形県東田川郡朝日村大鳥をとりあげ、住民の自然に対する適応的行動・民俗について調査してきた。両調査地とも62年度に実施した調査の補充が重点であった。しかし今年度はそればかりでなく、さらに住民の超自然に対する認識と自然認識の関係にも注意を払ってきた。自然認識の対象としては黒島では植物・魚類・鳥類、大鳥では植物(特に菌類)・淡水魚類・昆虫・哺乳類など生物的自然を主要なものとした。超自然とのかかわりの中では方位・地形認識(民俗的認識の結果としての地名を含む)が重要な対象であることが判明した。特に黒島は隆起サンゴ礁に囲まれた裾礁島であり、生業活動の上でも民俗宗教活動の面でもリーフの認識・島の地形認識が大きな意味をもっている。その典型は水信仰であり、黒島は最近西表島からの海底送水が実現するまでは水を天水と井戸に頼っていた。この井戸は潮の干満と大きな関係があり、島に数十ある井戸は満潮で湧水するもの、干潮で湧水するものなど多様である。そしてそれによって日常活動が規定されていた。日照りで雨乞が必要な時はツカサ(民間宗教家)など沖縄の民俗宗教を特色づける人々の活動があった。こうして生活水として井戸、聖なる場として井戸の両側面から島の民俗は大きな影響をうける。又大鳥では雪という自然がどのように生活を限定し、雪に対する感覚をどのように発達させているかを知ることができた。雪は風土的道具となっている。黒島の水、大鳥の雪に対する自然認識を解明できたことは前年度の生物的自然に対する認識の上部構造としての感覚を民俗レベルで体系的に記述できる材料を得たことになる。
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