研究課題
一般研究(B)
本研究計画は、近年刊行された各種人名索引、引得、および地方志、碑銘文集、さらに新聞雑誌の影印刊行物を主に利用して、魏晋南北朝期より民国時代に至る各時代の指導的政治勢力の形態と編成過程、運動過程を追跡し、中国政治史と社会史の有機的総合化をめざすものであった。昭和62年度は小尾孟夫を代表者として計画は実施されたが、小尾の外国出張によって、昭和63年度は寺地遵を代表者に変更して、研究計画を継続実施した。本研究計画の成果として、小尾孟夫、寺地遵、金子肇の成果を概述する。(1)小尾孟夫は、魏晋南朝の地方長官は「州刺史」であったが、州刺史は軍職として「都督州諸軍事」を帯び、常置的軍事支配体制を編成していたことに着目し、「都督州諸軍事」の編成した軍業力、その実際上の役割と意義を分析し、南朝における官僚体制と軍事編成体制の対応関係を明らかにした(「劉宋における都督と軍事」)。また内乱・対外戦争の場合に設けられた独自な軍事力編成としての「征討都督」にも注目し、その任用例、任用形態を詳細に検討して(「劉宋における『征討都督』)、前論文とあわせて南朝の軍事力編成、軍事集団の特質と政治勢力構成の基礎を考察した。(2)寺地遵は南宋政権確立期の諸政治勢力の個性と運動過程を詳細に跡づけ、南宋初期政治史の全体的記述を試みた(『南宋初期政治史研究』)。また南宋確立期を主導した政治勢力の秦檜勢力に関して、その構成と特質、形成過程、および限界などについて別個の論考をまとめた(「専制期秦檜集団の構成と特質」)。(3)金子肇は、上海ブルジョワジーと国民党の政治支配との関係に一定の展望を与えることを試み、上海のブルジョワジー内部で自らの階級的政治的結集を図ろうとした勢力と国民党との闘争過程を検討し、1920年代後半期におけるブルジョワジー勢力の政治的限界を明らかにした(「上海資本家階級と国民党統治」)。
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