研究概要 |
1.分担者の福永は弥生時代の葬制を中心に研究を進め, とくに屈葬と伸展葬について,その時期差と地域差について資料集成を行ない, 西日本において弥生時代後期に転換期のあることを明らかにした. 分担者の大石は中世の墓制について文献史料の分析を進める一方, 静岡県一ノ谷遺跡をはじめ中世墓地遺跡の現地調査をも実施した. 代表者都出は, これらの研究を総括しつつ, かつ中国や朝鮮半島など外国の葬制との比較をも進め, 古墳時代の開始期に, 葬制に関して中国思想の影響があることを明らかにした. 2.葬制解明のための野外調査に関しては, 古墳発堀計画の推進のために, 本年度は古墳の分布調査と測量調査を実施して所期の目的を達成した. 発堀調査については土地の所有者との交渉などに予想以上の時間がかかり, 若干遅れている. しかし, その分の時間とエネルギーを墳丘測量などに重点を移したので, 次年度調査との総合的見地にたてば, 支障はない. 3.備品の主要部分を占める図書は, 古代葬制を研究する上で欠かせない基本文献のうち, 代表者が所属する大阪大学に所蔵していなかったものを購入した. この文献の研究にもとづき, 原始から中世にいたる, 当核課題に関する研究は極めて容易になった. また, 日本古代と比較するための, 中国・朝鮮を中心とする諸外国の文献についても蓄積することができた結果, 国際的視野にたった研究の展望がひらけつつあるのは極めて喜ばしいことである. 4.以上の研究成果は, 考古学と文献史学の二つの方法の共同によるところが大きいといわねばならない. この長所を次年度以降にも活用して所期の目的を達成したい.
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