研究概要 |
1.初年度における研究体制の設定 当初の計画どおり, 本研究の目的を達成するために, 近世から現代までの来日文学者・思想家たちの行跡全体像の輪廓を明らかにする<作業>を設定した. (1)研究体制の整備, 全員で研究代表者の出した計画案にもとずいて, 作業の範囲と研究分担の調整を行った. (2)基礎文献の探査 日本における漢籍関係目録や, 中国での本研究目的に関わる既刊行目録等で現在容易に入手できない基礎文献及び関係論文資料をリストアップし, それらの収集に努めた. (3)研究会の開催と通信の発行 年三回の研究会を開催し, 会報として『通信』を三回発行し, 研究所容を明確化し, 研究の進展状況を円滑にした. 2.新たに得られた知見と成果 いまだ初年度であり, 集約段階でないので, 確固とした成果といえるものはない. ただし新たに得られた知見としては, 次の二点があげられる. 秋吉は研究「一九三十年代日中文学運動の一解明」で, かつて留学生であった林林, 黄〓両氏に中国で会い, 当時の二国間の文学交流には互いに拮抗する両勢力が厳存していた事実を確認し, 町田は載季陶の日本国志に現われている歴史回帰が, 津田左右吉的発想に影響されるものであることを明らかにした点である. 他の諸氏は, 岡村が宇治万福寺所蔵の隠元文献, 福田は内閣文庫所蔵の陳元贇文献, 海老井は台湾大学所蔵の呉濁流・龍瑛宗文献, 岩佐は日本滞在時の蒋光慈文献, 竹村は京都逗留時の王国維文献, 牧角は揚達文献などと, それぞれに資料の蒐集作業を鋭意に遂行した. 3.来年度は現在進行中の未確認の基礎文献及び関係資料の収集と整理の全過程を早急に完了させ, 充実した研究成果の達成を期する予定である.
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