研究課題/領域番号 |
62450059
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
仏語・仏文学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
二宮 敬 東京大学, 文学部, 教授 (50011284)
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研究分担者 |
小倉 孝誠 東京大学, 文学部, 助手 (60204161)
中村 俊直 東京大学, 文学部, 助手 (40189048)
田村 毅 東京大学, 文学部, 助教授 (90011379)
塩川 徹也 東京大学, 文学部, 助教授 (00109050)
菅野 昭正 東京大学, 文学部, 教授 (20012271)
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研究期間 (年度) |
1987 – 1988
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キーワード | フランス文学 / 詩学 / 修辞学 / 批評 / 文学史 |
研究概要 |
本研究の出発点には、文学研究、とくに文学史のいやおうなしにはらんでいる一つのパラドックスに対する素朴な驚きがあった。それは、文学史がすべてを歴史的な視点から捉えようとしながら、その名称のよってきたる由来であり存在理由でもある「文学」の観念は除外しているというパラドックスであった。たいていの場合、文学史は、今日通用している文学の観念を何の疑いもなく受け入れ、それを過去のさまざまな著作に適用して、文学と非文学の境界を画定した上で、前者について通時的叙述を行う。しかし19世紀以降の文学史が対象としている「文学」litteratureの概念が成立したのは、18世紀後半から19世紀前半にかけてのことであり、またフランス文学とかイタリア文学という一国文学の観念の誕生は、ロマン主義とナショナリズムの興隆と無縁ではない。それ以前には、「文学」の語は、文学によって記された学問の総体とそれに関する知識を意味していた。逆に、現在「文学」の名で指示されている文筆活動は、近似的に「雄弁」と「詩」の二本柱からなる「美文学」belles-lettresであると考えられていた。そして詩学と修辞学はそれぞれ、詩と雄弁の理論的考察なのである。さらにルネサンス以来用いられるようになった「批評」の語は、もともとはテクストの正しい読みの判定、文献学を指していたが、次第に趣味の判定、すなわち美的判断を意味するようになり、「詩学」、「修辞学」と並んで、近代的文学の誕生以前の「文学」のメタ言語の一つとなった。以上が、二年間にわたる共同討議の結果、導き出された暫定的な見通しであり、各担当者はこの共通の了解に基づいて個別に研究を進め、その成果の一端は、別添の研究成果報告書に発表されている。
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