研究分担者 |
高橋 輝暁 東京大学, 教養学部, 助教授
麻生 建 東京大学, 教養学部, 助教授
吉島 茂 東京大学, 教養学部, 助教授
新田 義之 東京大学, 教養学部, 教授
岩村 行雄 東京大学, 教養学部, 教授 (30012438)
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研究概要 |
本年度の仕事の中心は,明治以後のドイツ言語文化に関する出版物,ドイツ語からの翻訳および翻案文献など第一次資料を探索・収集することだった. 現在国会図書館に所蔵されている旧帝国図書館蔵書のなかから,明治初年〜昭和15年の時期のドイツ関係の図書文献を徹底調査し,「文学」「紀行」など項目別に目録を作成し,そのデータベース化を実行した. 次に,東大教養学部外国語科図書室が所蔵するドイツ関係の和書の在庫調査を行ない,そのうえで必要な関係図書を可能な限り入手した. このように研究資料の充実を図りながら,私たち研究グループは定期的に会合をもち,各自の資料検討の結果を持ち寄り, 討議を重ねた. これまでの結果の総合すると,明治大正期のドイツ言語文化は日本の国粋思想や帝国主義の醸成に関接的に協力する面が強かったが, 他方ではまたその傾向を阻む力をもつ自由で深い人間性の理念を日本にもたらしたのであり,その両者はせめぎ合い,絡み合って,日本の現代文化の土壌の重要な部分を形成していたと見ることができる. ドイツ文化の受容は,従来考えられていたよりはるかに重層的,多面的であり,かつまたある程度まで文化対決の要素を含んでいたのである. 本年度の具体的テーマとしては,1.大正教養主義におけるドイツの哲学と文学の役割,2.表現主義演劇の受容と新劇への影響,3.昭和20年までのドイツ語学文学研究の文化的機能,4.自由民権運動においてドイツ思想がもち得た意味,の4項目に重点を置いた. さらにドイツ語学習の歴史についても,回想録など第一次資料の収集のために各地の図書館等で調査を行ない,若干の面接調査も実施したが,これは継続調査が必要である. なお日本独文学会機関誌「ドイツ文学」の各表巻末に掲載されている寄贈文献目録のすべてを項目的に集計し,戦後のドイツ文学研究の変遷を数字で明示する作業と,63年予定の来日ドイツ人の活動調査も進行中である.
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