研究概要 |
1.研究実施計画に基づいて, まず原資料の特定と収集の作業に着手した. これに伴い国内の研究機関における資料の保有状況調査として京都大学における関連資料・文献の調査を実施した. また二次的文献資料についても, 本文校合報告図書, 古文書学関連図書等を始めとしてその特定と収集を行った. これら資料の一部については調査段階では入手可能と思われたにも拘らず, 予算的・時間的制約から断念せざる得ぬものもあったが, 本研究遂行上特に支障のないだけの十分な資料を収集し得た. 2.次いで, 大学院生等他の研究掫者の協力をも得て, 収集された資料の分類整理の内容の予備的記述を行い, 詳細なカード目録を整備した. 3.以上の作業の結果をもとに, 本年度は特に次の三点に重点を置いて研究を進めた. (1)アイスキュロスの作品断片の伝承ならびに本文校訂に関して, 古代作家による引用とパピルス断片として発見されたものの両者を含めた総合的検討を行うことにより, 古代におけるギリシア悲劇作品の伝承の実態を把握することに努める. (2)ソポクレースの主要写本人およびAを取り上げて両写本を比較校合しつつ各々の読みの確認を行い, また近現代における校訂版と対照してビザンチン中世の小文字写本の代表というべきこれら両写本の異読の意義とその修訂の根拠を考察する. (3)ウェルギリウスの主要写本のうち最古のものに属する4ー5世紀の大文字写本A,F,Rを対象としてその読みの確定と校合の作業を行い, ラテン文学作品の本文伝承史上における大文字本の位置づけの問題に配慮しながら, 優れた伝承の歴史を有するウェルギリウス作品にすら早期から生じている異読の由来と影響を古文書学的観点から孝察する. 4.以上の作業を各研究分担者ごとに作業手順等の調整を行いつつ進め, 研究の最終段階においては特に会合を開いて各々の進捗状況と成果を報告し, また今後の方針を検討した.
|