研究概要 |
(1)イギリスの労働組合運動における対案経済戦略運動の一典型として,ルーカース・エアロスペースのショップ・スチューワード運動に注目し,それをイギリス労働組合運動の全体の流れのなかに位置づける作業をおこなった. その結果,「社会的に有用な生産」をめざす民衆的対案戦略の運動が,革新的な地方自治体と結びついて,後退を重ねてきたイギリス労働組合運動の新たな拠点形成にむかっている構図が明らかになってきた. 1970年代にイギリス労働党政権が追求した社会契約路線の挫折のなかから新たに模索されている運動方向も,この構図のなかに位置づけられる,というのが我々の到達しつつある結論である. (2)日本における対案経済戦略運動は,イギリスよりも数段おくれているように思われるが,我々は,自治労〓下の地方自治体職員の「地方行革」に対抗する運動のなかで「地域生活圏闘争」の概念が打出され,模索的な実践がおこなわれていることに注目し, 各地での資料蒐集をおこなった. また,最近の「産業空洞化」現象に直面している主要単産において,対抗的経済プランの構想が論討されざるをえないことに着目し,鉄鋼,造船,機械,金属,電機,石炭,繊維などの主要単産本部からの資料蒐集をおこなうとともに,全国金属については,反合理化闘争のなかから対抗的経営参加の路線が模索されつつあることを立入って明らかにした.
|