研究概要 |
本研究は下関造船業の再編過程の追跡を通じて, 構造不況下の地域経済の動向をさぐろうとするものである. 本研究はために, 下関における造船業全体の構造と今次不況における離職者発生状況の2つの実態調を行った. 下関造船業はかつて許可造船所10(うち5千トン以上新造の船台4,ドック2),登録造船所11を数える西日本では有数の造船集積地域であったが, 3船台,2ドックが今次の海造審答申によって廃棄され, 1ドックが5千トン未満に縮小されるという大幅縮小を迫られることになった. 下関における造船関連産業を事業所統計を基本に団体各簿等により補完したところ, 建設・製造・サービス関連372,商業関連89,計461事業所へ多きに上り, 造船産業へ地域経済における裾野の広さが確認された. これら関連産業は70年代末の地場中手2社(旭洋,東和)の倒産以降, 造船関連業種の縮小, 他業種への転換を図っているが, 今回の実態調査でも既に,休廃業18,転居・不明40を数え, 不況の深化をうかがわせる. 現在, 分析を進めており, 下関造船業全体の立体構造を明らかにしていく計画である. 他方, 地場中堅の林尊造船の新製部開撒退・解散によって大量の離職者の発生をみており, 87.4〜11での下関職安造船離職ー就職者は897名に上っている. これら離職者の再就職動向を追跡しているが, 再就職率43%(林尊造船離職者61%,その他31%)と下請関連を中心に厳しい収況が浮彫りにされている. 再就職は他業種への職換は困難を極めており, 造船職種をより低い労仂条件で下降移動する傾向がみられる. 地域労働市場全体の中での造船離職者の動向を今後, 分析していく計画である. 以上,本研究は2つの実態調査を終えて,その緒についたところであり, 下関造船業の実態把握を通じて,地域における産業・雇用へあり方を問い直す本研究の最終目的に進んでゆきたい.
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