研究概要 |
本研究は、わが国の近代住居における領域区分の枠組みを家族の人間関係の秩序性に注目して住文化論的に考察すること目的としている。(1)全国を対象としたアンケ-ト調査(2,525票)、(2)詳細住まい方調査(49件)、(3)VTR調査(15件)を実施して分析を行った結果、以下のような知見を得ることができた。 1.私領域の子ども部屋に関しては、プライベイティズム化現象、すなわち、本来プラベ-ト化する必要のない住生活行為が過度に個室へ持ち込まれた現象として捉えることにより、その実証と形成起因についての考察を行った結果、この住生活行動は子ども部屋の空間概念が主体系のものであることが規範となっていること。 2.同じく主寝室に関しては、主寝室の安定性・専用性、規模・内部構成から、欧米の主体系の空間概念とは対比的に特定行為系が一般的であること。このことは、欧米にみられるような夫婦の人間関係の成立自体がわが国において戦後遅れたことによるものであること。 3.公領域の居間に関しては、居間の呼称の史的分析からその空間概念が主体性と統括行為系に分かれること。特に婦人の居室としての居間が家族のだんらんの空間としての居間に変化したこと。また、現在においても居間が家族のだんらんの空間として機能しながらも、空間概念的には親の主体系の性格を強く残していること。さらに、このことは家族コミュニティ上問題が大きく、これには家族成員の人間関係と住生活行動様式において子ども中心主義の成立がもとめられること。 4.以上、家族成員の人間関係の秩序性が住生活行動様式に反映し、その調製機能の場所的性格として、わが国の「居室」なる独自の空間特性を温存させた住居空間の領域区分の枠組みがつくられていることが明らかになった。
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