研究概要 |
本年度の研究においては, 借家をめぐる現代的状況ー特に地代家賃統制令の廃止, 「底地買い」といった立退きの発生ーの中で, どのような住生活問題が発生しているのか, また, 居住者はどのような住要求を持ち, 借家ずまいをどう評価しているかを実態調査をもとに検討した. 実態調査は三種類実施した. A.概況調査, B.底地買い発生中の被害者調査, C.底地買いによって立退かされた人々への追跡調査である. 調査対象としては, 地代家賃統制令対象家屋が全国で最も多かった大阪を採り上げ, 借地・借家人組合の協力を得て調査を実施した. その結果, わかったことは次のとおりである. 1.概況調査(A調査)よりー大阪府下全域を対象とした概況調査の有効回収数は892である. (1)統制令撤廃後の地代家賃は部分的には大幅な値上げが現われているが, 全体的には表面化していない. 固定資産税評価替えが実施される本年度に大きな影響がでるのではないかと予想される. (2)すでに立ち退きを請求されていたり, 底地買いの被害に遭っている借地借家人世帯がかなりある. (3)多くの世帯は今住んでいる住宅に住み続けたい願望を強く持っている. 特に, 居住立地限定階層である高齢者世帯, 自営業を営む世帯にその願望は強い. 2.底地買いがもたらす影響(B.C調査より)ー(1)底地買いがもたらす居住者への影響には居住不安, 生活被害と周辺コミュニティへの影響, さらに立退き後の生活に与える影響とがある. (2)これらの影響の度合は全ての居住者層に共通に現われるのではなく, 家族形態, 年齢, 職業といった生活条件と収入, 立退き料等の経済的条件に規定され異ってくる.
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