研究概要 |
本研究の目的は,まず16素子(4×4)2次元アレイ測光器を製作することである. 現在近赤外領域の多素子検出器としては60×60程度の赤外カメラが実用化されつつあるが,我々の4×4は素子数は少ないものの,1素子あたりの視野が大きく,広がった天体に対する感度が高い. 特に広がった天体の線スペクトルの分光観測に威力を発揮し,世界に例のないユニークな測光器である. これを用いて,銀河系内外の星形成領域における広がった赤外光の物理・化学的性質,さらに運動を調べる. 例えば,この測光器をファブリ・ペロ分光器と結合して,2μm帯に存在する水素分子の振動準位線を観測し,水素分子の励起状態,化学的変遷,さらに,ショック領域,光解離領域の物理的,幾何学的構造を調べることを目的としている. 本年度(3年計画の初年度)は,16素子2次元アレイ測光器を製作することが目標であった. InSb検出器のヘッドアンプアレイ以外の部品はほぼそろった. 現在,測光器本体(液体ヘリウム冷却用クライオスタット)に組み込んでいる. 特にInSb(インジウム・アンチモン)アレイ素子本体は,現在,浜松フォトニクス(株)において最終テストが行われている. 昨年より試作がくり返され,50K(絶対温度)における性能は,米国製に匹敵する. さらに可能な限りサイズを大きくし,比較的簡単な光学系で,大きな視野(1mクラスの望遠鏡に取り付けた場合全体として2分角)が得られる. 本年度の成果をまとめると,(1)InSb素子の開発に成功したこと,(2)測光器としての設計,各部分の製作が順調に進んだことがあげられる. 来年度は,測光器の組み上げ,プリアンプ,ロックインアンプ(各16チャンネル)などのエレクトロニクスの製作(試作,テストはすでに終了),データ取得プログラムの製作などを前半に行い,冬のシーズンの観測に備える予定である.
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