研究概要 |
本研究の目的は, 大強度陽子加速器で必要とされる各種検出器を開発する事にある. 具体的には, 通過する粒子密度が空間的時間的に大きい状況下で動作するマルチワイヤーチェンバーや光電子増倍管を開発する事である. 開発の基本的方針は, チェンバーに開しては, (1)ドリフト速度の大きいガス("ファーストガス")を使用する事,(2)空間電荷効果を少なくするため, ガス増幅率を低く押える事, (3)セルサイズを小さくし, 電場構造を工夫する事, 等である. また, 光電子増倍管に関しては, (1)"ゲイン"を低くする事, (2)最終2〜3段のダイノードを別電源等で安定化する事である. 上記の目標を実現するためには, いずれも高性能プリアンプが必要不可欠である. 本年度は, ファーストガスの基本特性の測定及び高性能プリアンプの試作を行なった. 主要な結果を列記する. ファーストガスに関しては, (1)純粋CF_4, (2)Ar(90%)+CF_4(10%),(3)Ar(50%)+CF_4(50%), の3種類について, ドリフト速度を測定した. その結果いずれのガスも約10cm/μsのドリフト速度を有する事が半明した. この値は, 通常よく使用されるガス, Ar(50%)+C_2H_6(50%), に比較して約2倍の値である. 現在, セル構造の異なる2種類のチェンバーを試作し, 位置精度等をチェックしているが, 基本的には, 当初の意図通りの性能を有すると思われる. プリアンプに関しては, 立ち上りが速く, 雑音の少ないものが必要である. 試作の結果, 立ち上り速度2.2ns(6.2ns),"equivalent electron"数に変換した雑音レベルは, 2700ヶ(3650ヶ)の性能を持つプリアンプが完成した. 但し上記数値は, 入力キャパシター5pf(70pf)の値である. 来年度は, 当初計画通り, ビームテストを行ない各種の性能測定を行なう. また実用機の試作も行なう.
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