電磁石付天体追尾型粒子望遠鏡を用いて、Cygnus X-3等の特定の天体を追尾し、それらの天体の方向からくるミュ-オンの時間変化や頻度を運動量及び荷電の正負を計測しながら観測するのが本研究の目的であった。補助金交付期間内に、この粒子望遠鏡と稼動システムの設計・製作を行い、完成させ、これらを用いての観測・デ-タ解析行った。基礎測定等による調整後、追尾測定の第一目標であるCygnus X-3の完全な計測は1989年10月02日から現在まで行われ、まだ観測を続行中であるが、一日につき5.5時間の追尾観測を行ってきて、そのうち1989年10月02日から1990年03月01日までの半年弱の測定期間に対してデ-タ解析を行うことができた。人射角で望遠鏡の軸に対し、±3.5°内のイベントの位相解析をvan der KlisとBonnet-Bidaudによって導出された周期値を使用して運動量別、電荷の+、-別に分けて行った。Cygnus X-3の一周期を20分割した位相解析で、μ^-の[4.0〜22.5]GeV/c(GeV:10^9eV)の運動量領域で位相値[0.65-0.7]に4.7σのピ-クを持つという明瞭な結果を得た。このピ-ク位相値はガンマ線や地下ミュ-オンの観測でも特徴的な値である。このピ-クはこの運動量領域より高い場合も低い場合も現われない。又、同じ運動量領域のμ^+でも全く現われない。μ^-でも全運動量領域を集計すると優位性が見えなくなってしまう。従って、通常の運動量弁別をしない場合は通常のミュ-オンにかくれてしまうことがわかる。低運動量でのμ^-の優位性はこれまでのどの研究グル-プも持ち得なかった新しい知見である。そのため、Cygnus X-3からのミュ-オンのオリジンにも新たな検討(例えば、低いエネルギ-ニュ-トリノ等)が必要になり、Cygnus X-3モデルの新たな発展を促すであろう。さらにニュ-トリノがオリジンだとなれば、ニュ-トリノ振動の実験やニュ-トリノ望遠鏡に対しても新しい見方が展開される等が期待される。
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