研究概要 |
1.反強磁性共鳴:本研究の主目的の1つ,電子との相互作用で増巾された核スピンの反強磁性共鳴実験は成功した. 増巾された核スピンは,秩序状態の実現された物質が少ない事,またその共鳴周波数が丁度測定の難かしい領域である為,これまで秩序状態の増巾核スピンの共鳴測定はない. 我々は本研究費で購入したシンセサイザー発振器と波形解析装置を現有装置及び,手付りの装置と組合わせて用い,Cs_2NaHoCl_6のHo核スピンの共鳴信号の測定に成功した. 又同じく購入した周波数カウンターを手作り装置と組合わせた核スピン帯磁率測定を同時に行い核スピンの温度を測定し,反強磁性共鳴磁場の温度変化を測定した. これらの測定から, 核スピン間の相互作用,及びスピン構造に関してかなり精度の高い情報が得られた. 今後,同じく増巾核スピン系のHoVO_4についても同様の実験を行いたい. 2.磁気カピツア抵抗:同じく増巾核スピン系のTmVO_4粉末と液体^3Heの間の界面熱抵抗が約4mK以下で温度減少と共に小さくなる事を観測した. これは増巾核スピンと,液体^3Heの核スピンとの間の磁気結合による界面熱抵抗の減少と思われる. 磁気結合は,CMN等では観測されているが増巾核スピン系では初めてである. 又その磁場依存性はCMN等の結果と異っておりその機構解明は興味ある今後の課題である. 一方この現象を用いて,液体^3Heで予冷した増巾核スピン系の断熱消磁冷却により,新しい物質の増巾核スピンオーダーの実現を今後試みて行きたい. 3.純金属の核スピン・オーダー:もう1つの目的である純金属の核スピンオーダーは,補助金の減額により超伝導マグネットの購入が出来なかったので予備段階にとどまっている,前記,磁気カピツア抵抗の研究にも必要なので現在1段のCuの核断熱消磁冷却の準備中である. 是非近い将来に純金属の核スピン・オーターを実現したい.
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