半導体へテロ界面を通しての電子・正孔系のトンネル過程の実時間領域での様相を明らかにする事を目的として、以下の3つの研究を推進してきた。 〈垂直電場引加下でのGaAsーAl_<0.29>Ga_<0.71>Asの非線型発光分光〉垂直電場引加下で、GaAsーAl_<0.29>Ga_<0.71>Asの励起子発光、および、光電流の非線型性を励起レーザー光を二つに分け、別々の周波数でONーOFF変調をかけ和周波成分を選択的に検出する事により研究した。この研究により、垂直電場引加下で競合する二つの過程ーー励起子生成と電子のトンネル過程ーーの競合の様子が初めて明らかになった。 〈混晶量子井戸AlxGa_<1-x>AsーAlAsの光学的研究〉混晶量子井戸AlxGa_<1-x>Asの系は、xを変化させる事により、AlxGa_<1-x>As井戸中のΓ点とAlAsバリア中のX点を交差させる事ができる。この交差に併い、井戸中のΓ点電子がバリア中のX点へ、ヘテロ界面を通してトンネル過程がおこる事が期待できる。このΓーX交差の光スペクトルへの反映を研究する事をねらってルミネッセンスおよび、吸収飽和分光の研究を行なった。この研究により、井戸厚が100A程度のときx=0.2程度でΓ-X交差がおき、ルミネッセンスに顕著な変化が観測された。 〈Al_<0.34>Ga_<0.66>AsーAlAsの超高速ポンプ・プローブ法により層間ΓーX散乱の研究〉約200fsの時間分解能をもつポンプ・プローブ分光計を作成し、Al_<0.34>Ga_<0.66>AsーAlAsの最低エネルギー励起子の吸起子の吸収飽和の時間特性から、層間ΓーX谷間散乱のダイナミクスを初めて研究した。吸収飽和の1.2ps程度での速い回復の様子から、層間ΓーX散乱が、1.2ps程度でおこっていると結論した。この時間は井戸中のΓ電子のバリア層へのわずかなしみ出しに起因すると推論した。
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