研究概要 |
1979年のアンダーソン局在についてのスケーリング理論に端を発した研究の結果, 1μm程度の微細な寸法をした導体の極低温での伝導には伝導電子の波動性が直接反映されることがわかってきた. 本研究は, 電子線リソグラファー法を使って1μm以下の微細な構造をもつ種々の形状の金属試料を実際に作り, その電気的・磁気的性質を極低温度で測定することによって微細な金属に特有なこの量子効果を調べることを目的としている. 本年度は第1年度であり, 試料作成法の習得・改良から始めた. その結果ポジ型レジストとスパッタエッチングによる加工方法に加え, より細かな加工に適したネガ型レジストを用いたリフトオフ法が使えるようになり, 約0.1μm幅のパタンを作成できるようになった. 一方, 測定については, 銀の金網状試料(各網の寸法は1μm×1μm)においてアンダーソン局在に起因するh/2eの磁束周期をもつ磁気抵抗変化(アハラノフーボーム効果), アンチモンの単一リングとビスマスの細線試料の磁気抵抗に量子ゆらぎと考えられる再現性のあるランダムな変化を観測するなど, 一連の予備的な結果を得ている. 来年度は, ゆらぎの原因を調べるために試料の特性をバイアス電圧を印加して変える実験を試みるとともに, 微細リングの磁気的性質・金属微粒子を介した微細トンネル接合の特性を調べる予定である.
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