ホットウォ-ル法による層状物質の薄膜単結晶及び超格子の作成とその光物性

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62460025
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 嶽山 正二郎 東京大学, 物性研究所, 助手 (20163446)
• 研究分担者: 三浦 登 東京大学, 物性研究所, 教授 (70010949) ; 小松 晃雄 大阪市立大学, 理学部, 助教授 (90047134)
• キーワード: BiI_3薄膜単結晶 / ホットウォ-ル法 / ファンデァワ-ルスエピタキシャル成長 / 層状物質 / 表面励起子 / 励起子-格子相互作用 / PbI_2 / BiI_3層状超格子 / 磁気光学効果

研究概要

BiI_3単結晶薄膜は、前年度までの技術を更に改善して、良質の薄膜単結晶が得られるようになり、このことは、バンド端励起子の吸収スペクトルだけでなく。電子線回折像によって直接証明された。前年度までの研究から界面励起子であろうと思われた励起子吸収線は、その後の系統的実験からBiI_3表面にできる表面励起子であることが判明した。これは、ホットウォ-ル法で得られた薄膜表面の完全性を証明するだけでなく、一般の物質では観測例の少ない表面励起子の物性を詳細に研究するための素材の一つとして期待される。更に、バント端の直接励起子の吸収スペクトルが鮮明にしかも必要な吸収強度で観測可能となったため、精密なスペクトル形状解析が可能になっただけでなく、温度変化も2Kから室温近くまで広範囲に測定できるようになり、共鳴ラマン散乱の測定等も踏まえて、BiI_3直接励起子の励起子-格子相互作用に関する新しい知見が得られつつある。この様に励起子内部構造と動力学との両方にまたがる研究が可能となった。
Bil_3とPbI_2薄膜を交互に積層した、BiI_3/PbI_2層状超格子に関しては、各物質の層幅を系統的に変化させて狭くしていった時、PbI_2励起子吸収ピ-ク位置の顕著なブル-シフトが見られ、銅ハライド等で観測されている様な励起子重心運動の量子サイズ効果に起因するものと考えた。しかし、その後のパルス強磁場下での磁気光学効果の詳細な実験や、BiI_3励起子吸収ピ-ク位置が層幅による変化が見られない事実等から、この新しい超格子が「タイプII」のエネルギ-構造になっている可能性があることが判ってきた。PbI_2層の励起子の発光にも興味ある現象が観測され、現在のところ外因性自己束縛励起子か励起子-ドナ-複合体の2つの可能性を考えて、強磁場磁気光効果、高圧下の実験等を進めて、これらの現象の次元性の問題を含めてより総合的な研究を行っている。

研究成果

• [文献書誌] Y.Nagamure,S.Takeyama,N.Miura: "Magnetoabsorption spectre of bandーedge excitons in 2H-PbI_2 at high magnetic fields up to 40T." Physical Review B. 40. 8099-8102 (1989)
• [文献書誌] S.Takeyama,K.Watanabe,N.Miura,T.Komatsu,K.Koike,Y.Kaifu: "Magneto-optical effects of excitons in BiI_3 crystals under pulsed high magnetic fields: Indirect and direct excitons" Physical Review B. 41. (1990)
• [文献書誌] K.Watanabe,S.Takeyama,N.Miura,T.Komatsu: "Observation of surface excitions in BiI_3 thin films single crystals grown by the hot wall technigue." Solid State Communications. (1990)
• [文献書誌] S.Takeyama,K.Watanabe,T.Komatsu: "Thin-Film Single-Crystal Growth of BiI_3 by a Hot Wall Technique" Japanese Journal of Applied Physics. (1990)
• [文献書誌] T.Komatsu,K.Koike,Y.Kaifu,S.Takeyama,K.Watanabe,N.Miura: "Magneto-optical effects of excitons in BiI_3 crystals under pulsed high magnetic fields.II-Excitons Localized at two dimensional defects" Physical Review B. (1990)
• [文献書誌] S.Takeyama,K.Watanabe,M.Ichihara,K.Suzuki,N.Miura: "Van der Waals-epitaxial growth of thin Bii_3 films on pbI_2 and CdI_2 sobstrates by a hot wall method" Applied Physics Letters. (1990)