研究課題/領域番号 |
62460026
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
固体物性
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
腰原 伸也 東京大学, 理学部, 助手 (10192056)
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研究分担者 |
十倉 好紀 東京大学, 理学部, 助教授 (30143382)
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研究期間 (年度) |
1987 – 1988
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キーワード | 中性ーイオン性(NI)相転移 / 電荷移動(CT)錯体 / パイエルス歪 / 強誘電的ドメイン / スピンー格子相互作用 / 荷電ソリトン / 負性抵抗特性 / 光誘起スペクトル |
研究概要 |
中性ーイオン性(NI)相転移は、交互積層(DA)型の電荷移動(CT)錯体が、温度や圧力の変化に対して、ほぼ中性の状態から、各分子上に1/2スピンを持つイオン性の状態に変化する現象である。本研究は、NI転移を示すCT錯体、あるいは、NI相境界に近いCT錯体の単結晶・薄膜を作製し、多様な物性の測定を通じてNI転移系の総合的な特徴を明らかにすることを目的とした具体的には、外場(電場、磁場、光、圧力)によって、NI転移および関連する物性の制御を目指した。まず、NI相境界に近いTTFーべンゾキノン系の数種の錯体結晶に対して、圧力印加によって、NI転移が起こることを確認した。これらのCT錯体の高圧下での赤外振動スペクトルの測定によって、単に価数変化だけでなく、NI転移に伴う分子積層構造の変化も明らかにすることができた。これによれば、多くのNI転移は、I相でのスピンー格子相互作用によって、1次元積層構造の2量体化(パイエルス歪)を伴う。I相でのDAの2量体化は、極性を有する強誘電的ドメインを発生し、またそのドメイン壁は、荷電ソリトンとして振舞うことが期待される。この特徴を調べるために、電気伝導度および誘電率の非線形性、温度・圧力依存性、周波数特性などの詳しい測定を、TTFークロラニルを中心に、関連するNI転移系化合物について行った。その結果、電気伝導度は、NI相転移近傍で強く電場強度に依存し、高い電流密度領域では、負性抵抗特性を示す。また誘電率は、低いDC電場に対しては、NI転移点で発散的増大(>10^4)を示すが、その緩和時間は、その逆数が熱活性型になるような強い温度依存性を示し、また非線形性も著しい。一方、パルス光励起によっても分子ドメイン全体の価数の変化を示す強い光誘起スペクトル変化が観測された。これらの特異な現象の多くは、NI転移系に特有な低エネルギー励起の動力学によることが本研究で初めて明らかになった。
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