研究概要 |
1980年以来次々と発見されてきた有機超伝導体の特徴は, 数キロバール程度のわずかの静水圧のもとで,磁気秩序をもつ状態と超伝導状態の移り替わりが生じたり,超伝導臨界温度が6〜7倍にも変化するということである. 本研究の目的は, 有機超伝導体のこの特徴を利用し,高圧下の構造変態の研究を通じて, 有機導体の電子状態特に超伝導状態の性質を探ることである. 本年度は, 以下の3項目の研究計画を立てたが, ほぼ計画通りに研究が進んだ. 1.X線用特殊ゴニオメータの整備 構造変態に伴なって生じるX線回折の強度は極めて低い. 低温・高圧という困難な条件下でこれを精密に測定するために, 特殊な構造のゴニオメータを完成した. 具体的には, 低温装置を載せるために耐荷重が大きく, また, 検出器が鉛直面内でも回転するので, 迅速に高精度の測定が行なえるという特徴がある. 2.高圧セルの設計 ダイヤモンド・アンビルを用いた高圧セルを試作した. 到達圧は低いが, 試料スペースが大きく, また角度開きが大きいので単結晶からの弱いX線回折を捕える目的に適している. 今後, 実地テストを進めていく予定である. 3.試料結晶の作成 BEDTーTTF塩の作成ではめざましい進展があり, 10Kという高い臨界温度をもつ塩の合成に成功した. 構造的立場から, まず常圧下のX線実験を進めており, いずれ, 高圧実験に向かう予定である.
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