研究課題/領域番号 |
62460027
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鹿児島 誠一 東京大学, 教養学部, 教授 (30114432)
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研究分担者 |
齋藤 軍治 京都大学, 理学部, 教授 (40132724)
毛利 信男 東京大学, 物性研究所, 教授 (40000848)
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キーワード | 有機超伝導 / 構造変態 / X線回折 / 高圧実験 |
研究概要 |
本研究のねらいは、比較的低い圧力で構造が変化しやすいという有機結晶の特徴を利用して、結晶構造の観点から有機導体の電子状態特に超伝導状態の性質を探ることである。昨年度までの研究で、βー(BEDT-TTF)_2I_3超伝導体では約110K付近で超格子を記述する波数が小さくなること、および、この変化に要する時間は低圧ほど長く、常圧では数十時間に達することを発見した。 本年度は研究の最終年度として、この、いわばアニ-ル効果が超伝導に及ぼす影響の解明に力を注いだ。アニ-ル処理は以下のような変化をもたらすことを発見した。(1)超格子波数の減少(2)電気抵抗の減少(3)EPR線幅の減少、および(4)超伝導臨界温度の変化。 超伝導の臨界温度は、低圧下のいわゆる「低Tc相」では1.5Kであるが,アニ-ル処理によって2Kの相と7.5Kの相が出現する。超伝導の上部臨界磁場の測定によれば、7.5K相はいわゆる「高Tc相」と同じ性質をもつので、超格子波数の変化にともなう格子ひずみが局所的な圧力として作用し、超格子のない「高Tc相」が部分的に生じたものと解釈できる。 問題は2Kの超伝導相の起因と性格てある。アニ-ルによる抵抗の減少とEPR線幅の減少は、キャリヤの散乱確立の減少を示唆する。一方上部臨界磁場は「低Tc相」のものより、少し異方性が減少しており、結晶の層間結合の増大が示唆される。これらのことから考えられることは、たとえばBEDT-TTF分子の端のエチレン基のコンフォメ-ションに何らかの変化が生じて2Kの超伝導相が現われるということである。今後、この仮設を含めて、アニ-ル処理と超伝導臨界温度との関係を多角的に究明する必要がある。
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