磁性超伝導体として知られている体心正方晶の(RE)(Rh_<1-x>R_<ux>)_4B_4においては、多くのRE(希土類)に対し、Rh-rich側では反強磁性超伝導を示し、一方Ru-rich側では強磁性のみを示す。前年度我々は、Rh-rich側にあるTm(Rh_<0.9>Ru_<0.1>)_4B_4の単結晶を用いた研究に続き、Ru-rich側に位置するTm(Rh_<0.9>Ru_<0.1>)_4B_4では、臭気建表で。TmとならんでいるREはGd、Dy、Ho、Erに対して磁気秩序は強磁性である。また非磁性のLuの場合、Tc=2.1Kで超伝導を示すことからTmRu_4Ru_4B_4は、強磁性と超伝導がクロスするところに位置すると考えられる。そこで本年度は、TmRu_4Ru_4B_4について、^3H_e-^4H_e希釈冷凍機を用いて、1K以下の温度領域での電気抵抗、磁化の測定を行ない、この化合物における磁性と超伝導の相関について調べた。超伝導転移温度Tcは多少試料依存性があるが、概ねTc=0.3Kであった。上部臨界磁場H_<C2>は極端に低く、-(dH_<C2>/dt)_<TC>=440_2/K、H_<C2(0)>は120Oeであった。またH_<C2>はT_CからOKまで単調に増加する。一方、帯磁率が、約0.33Kでピークをもち、温度の低下とともに小さくなってゆくことから、磁気秩序は、反強磁性的であることがわかった。TnはTcよりもやや高いが、反強磁性と超伝導がほぼ同時におこる物質である。(RE)(Ru_4B_4系にといて、TmRu_4B_4が例外的に反強磁性を示すことは、Tn2Tcである点から考えて、この系の磁気秩序の出現には、RKKY相互作用と磁気双極子相互作用の両方が関与していることを示唆している。いずれにせよ、前年度我々が明らかにしたように、磁場によって強制的に局在モーメントをそろえた磁気誘起強磁性と超伝導は共存しうるが、ゼロ磁場下での強磁性と超伝導の共存の確認には至らなかった。
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