研究課題/領域番号 |
62460037
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
甲斐 昌一 九州工業大学, 工学部, 教授 (20112295)
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研究分担者 |
古川 浩 山口大学, 教育学部, 助教授 (10108269)
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キーワード | 液晶 / 電気流体力学的不安定性 / 構造転移 / 対流パターン / 相乗雑音 / フレデリック転移 / オストワルド熟成 / 磁界効果 |
研究概要 |
本年度は液晶の電気流体力学的不安定性(EHD)に伴う対流パターンの磁界や雑音等の外力の効果を研究した。EHDによって生じる最初のロール構造は磁界を印加することによってその形態を大きく変化させた。磁界を電極面内でロール軸に垂直に印加するとロールの方向は変化せずに、閾値は磁界強度に比例して上昇しロールの幅は反比例して狭くなった。また磁界の印加によって垂直ロールよりも、むしろ傾斜ロールやジグザグロールを呈するようになり、磁界誘起のリフシッツ転移が観測された。これはフレクソエレクトリック効果によるものと考えられる。一方強い磁界を電界と同一方向に印加するとEHDは観測されなかった。これらの現象は液晶の帯磁率異方性を考慮にいれたEHDの理論で理解される。垂直ロール、傾斜ロール、ジグザグロールの間の遷移の動的な挙動については、ポテンシャルの形の変化として定性的に議論された。磁界印加による過渡的動力学では極めて特異な現象が観測され、磁界を印加するとパターンの形成過程で一旦初期パターンが消失し、新しくパターンが形成され直す現象(パターン再形成)が観測された。これはパラメータ空間上で磁界の印加によって、状態が全く異なった安定領域に跳ぶものとして理解される。またこの再形成磁界で磁界エネルギーが電界エネルギーとほぼ等しくなっていることが分かった。このような磁界印加に伴う対流パターンの相図を電界周波数、電界振幅、磁界の三元相図として求めた。またロール軸は安定状態では磁界と垂直方向を向くがその垂直とのなす角度が磁界の強度とともにtan^<-1>(H/Hc-1)に比例して変化した(Hcは角度が変わり始める臨界磁界)。これはいわゆる平衡系で観測されるフレデリック転移に相当する現象として理解され、ガラス基板の界面アンカーリングと磁界との競合によって起こるものと考えられた。定量的議論は今後の問題として残された。
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