本研究は交差分子線法により準安定のKr^*とハロゲン分子からエキシマーを生成し、そのケイ光スペクトルからエキシマーの内部状態をモニターし、衝突の物理を論じることを主たる目的としている。実験はKr^*+F_2の系について特に慎重に行われ、KrFの初期分布を表わすのにサプライザル分布の適用が吟味されたが、不適切との結論に達した。むしろ、古典的衝突のモデルが良いことも示された。一方、SF_6、NF_3を相手とした衝突では、比較的低いエネルギーの電子の介在によって、基底状態との衝突では見られない大きな反応の確率があることが示されたが、分子イオンによるものか、電子/振動励起状態の寄与によるものかの結論は出されなかった。 Kr^*+F_2の系では、生成直後のKrFは高い振動状態(V=50〜100)に分布が多いことが示された。本研究は、分子線衝突という極限的な方法を用いることにより、反応の始状態を特定した上でエキシマーを生成することに初めて成功し、更にその初期状態分布を明らかにしたことに意味がある。 また、本研究では広い範囲の振動状態からエキシマーの発光が見られることを用いて、エキシマーのポテンシャルカーブの決定に寄与することができた。以前に行われた分光実験とは異なり、abinitioの計算から与えられるポテンシャルカーブは、核間距離がかなり大きいところまで妥当であることを明らかにした。
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