研究概要 |
本研究の主たる目的は,GPS測位干渉法の基礎を学び,同方式を応用して地殻変動を精度よく検出する方法を開発することにある. 本年度はその出発点として,基線網の設置,実験的観測,及び取得資料の解析に主眼をおき,実施計画に沿って研究を実施した. 観測には昨年導入したSONY社製GTTー4000型2台を使用した. まず,昭和62年5月に地震研屋上において,基線長が5m程度の仮基線を設置し,受信機の性能テストを兼ねて実験観測を行なった. その結果経緯儀を用いた地上測量と基線長で2mm以内の一致という良好な結果を得た. 引続き同年6月に,浦賀水道をまたぐ三浦・房総半島に設置された,一辺が8kmから14kmの三角形からなる基線網において,初めての干渉測位の野外実験を行なった. 得られた資料を用い,SONYから提供されたプログラムに基づく解析ソフトウェアの開発を行ないつつ基線解析を行なった結果,同年2月に同基線網で行われた光波測量の結果と2ppm以内で基線長が一致した. また基線網を構成する三角形から閉合差を求めたところ,1ppm以内の繰り返し精度が得られた. これらの成果は地震学会,測地学会で発表されると共に,八月にカナダで行なわれた国際測地学・地球物理学連合のシンポジウムでも発表された. 引続き同年秋より,東京天文台構内と地震研屋上を結ぶ約21kmの基線において繰り返し実験観測が行なわれ,データを取得した. このデータについては一部解析結果を経緯度研究会において発表した. 一方,三浦・房総の基線網においては昭和63年2月に再び観測を実施し, 取得データについて現在解析を行なっている. さらにGPS測位干渉法を地殻変動研究に応用するため,地殻活動の活発な伊豆半島に基線網を新たに設置し,光波測距儀と経緯儀による観測を実施した. ソフトウェアについては引続き開発を継続中である.
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