研究概要 |
湿潤積雪及び水に浸った積雪の圧密氷化過程の研究は実験と野外調査によって実施した. 実験室においては, 主に, 水に浸った積雪の定荷重三軸圧縮試験によって研究を進めた. 一方, 大雪山トムラウシ山付近にある越年性雪渓, ヒサゴ雪渓において, 雪渓内部の雪・氷界面に形成される帯水層の積雪の圧密氷化過程を6月と9月に現場で調査した. また, 湿潤積雪については, 北陸の豪雪地帯, 山古志村に測点を設け, 積雪の含水状態, 雪温, 融雪量と共に, 密度の鉛直分布を定期的に調査している. 水に浸った積雪の一軸圧縮実験では,密度0.35g/cm^3のしまり雪が1000kg/m^2の荷重のもとで,約170時間で氷化することが知られている. より自然に近い圧密条件である今回の三軸圧縮の場合は, その約2倍の荷重を加えても, 氷化するまでに1600時間以上を要した. これは, ヒサゴ雪渓で厚さ1ー1.5mの帯水層内の積雪が, 1000ー7000kg/m^2の荷重を受けた状態で水に浸っているにもかかわらず, 夏の3ヶ月間に密度0.65g/cm^3から0.75g/cm^3まで圧密したが, 氷化するまでには至らなかったという観測事実と符合している. 同じ上載荷重でも水に浸っていない積雪の圧密はせいぜい0.6g/cm^2までしか進行しなかったことから, 水に浸った積雪は急激に圧密されることがわかった.上載荷重を変えた実験の結果, 荷重の増加と共に氷化に要する時間は指数関数的に減少することがわかった. また, 雪質(粒度)の違いも圧密速度に大きな影響を与え, 例えば, 7500kg/m^2の荷重を加えた場合, 粒子の大きいザラメ雪では, 氷化するまでにしまり雪の約3倍もの時間を要した. また, 乾き雪の圧密過程では, 密度0.52g/cm^3及び0.67ー0.78g/cm^3で圧密機構が変化することが知られているが, 水に浸った積雪の圧密についても同様の乾き密度において圧密機構の変わることが見いだされた. 湿潤積雪の圧密過程については現在観測を継続中である.
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