1.日本国内の珪質変形変成岩試料を収集したこと。収集した変成帯(岩)は、カムイコタン変成帯、日高変成帯、常呂変成岩、山上変成岩、三波川変成帯、領家変成帯、飛騨外緑帯、鴨川変成岩、黒瀬川構造帯、三郡変成帯、長崎変成帯、八重山変成岩、丹沢変成帯である。一般に高温低圧変成帯(岩)には、ポリゴナルあるいは縦横比の小さい石英粒子が見られるが、低温高圧変成帯では、複雑な、偏平化した粒子が特微的であることがわかった。 2.高温高圧変形実験が可能になったこと。名古屋大学から移管した装置に改良を加え、現在までのところ、封圧4Kb(400MPa)、温度800℃、歪速度は10^<-6>/secで実験可能であり、実際に珪質マイロナイトを面構造に平行に圧縮して、褶曲を形成させることができた。この褶曲は圧縮方向に垂直な破断を伴なっており、この条件下では珪質マイロナイトは延性と脆性の両方の性質を持っていることがわかった。 3.理論的検討に基づく過去の差応力の見積り。マイクロブーディン構造を利用して、過去の差応力を半定量的に見積る方法を開発することに成功した。この"差応力計"を利用して高圧変成帯の過去の差応力の大小を比較することができた。差応力が大きい変成帯は、カムイコタン構造帯、山上変成岩で、一方差応力が小さい変成帯は八重山変成帯などである。三波川変成帯は地域によって異なっており、和歌山付近では大きく、天竜地域では小さいことがわかった。この方法で推定した差応力と石英の変形組織には、ほぼ相関があり、差応力が大きいほど石英粒子は長いものが現われる傾向があることがわかった。 4.透過電子顕微鏡用の超薄片を作製することが可能となった。このことにより、結晶内部の転位構造観察することが容易となった。
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