本研究に関して、西南日本各地および小笠原列島の新生代火山岩類の野外踏査を実施し、地質学的関係を明らかにした。さらに室内研究として、顕微鏡下観察、蛍光X線分析による火山岩の全岩化学組成、EPMAによる造岩鉱物の化学組成、およびKーAr法による噴出年代を明らかにした。昭和62〜63年度の2年間に、本研究テーマーで解明した点は次の通りである。 1) 火山層序を明らかにした地域は、北中部九州(多良岳、金峰山、阿蘇火山、九重火山、耶馬湲・英彦山地域他)、南部九州(北薩、南薩)、琉球列島八重山群島、瀬戸内地域(高松市、松山市他)、山陰地域および隠岐島後、小笠原列島(父島、母島)等の広範囲にわたる。 2) 西南日本の火山系列として(古第三紀〜)中新世のグリンタフ系と瀬戸内系、後期中新世〜最新世の大陸系、鮮新世〜前期最新世の豊肥・肥薩系、中期最新世の豊後系、後期最新世〜完新世の琉球・山蔭系が存在する。 3) アルカリ岩系は上記の大陸系と豊肥系の一部、ソレイアイト岩系はグリンタフ、大陸、豊肥、肥薩、琉球各岩系の一部に認められる。 4) 高マグネシア安山岩は、瀬戸内系および琉球列島の西表島グリンタフ系に認められ、前者はカルクアルカリ岩系、後者はソレイアイト岩系である。このことは、後者が高温の条件下における結晶作用で説明される。 5) 大陸系の火山岩類には、アルカリ岩系、ソレイアイト岩系、カルクアルカリ岩系が混在する。これらのうちの玄武岩類の岩石学的性質の差異については種々議論されている。しかしながら上記の方法で種々検討した結果、次のように要約される。すなわちマントル構成岩石の岩石学的性質の差異、メルティング(部分熔融)時のPT条件および溶融程度の差、結晶作用時のPT条件、マグマミキシングの程度、不混和の問題、混成同化作用の程度などで説明することができる。
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