研究概要 |
当研究課題の初年度では, (1)フィッション・トラック(F.T.)年代測定用の画像処理システムに光ディスク装置(備品費)を組み込み, 計測作業中の顕微鏡画像の入力・管理・利用を援助する画像データベース・システムをハードウェアおよびソフトウェアの両面で完成させること, (2)世界の標準年代試料を使用して画像処理システムの年代計測能力を評定して, 高い精度と信頼性のあるデータが得られる実用システムを実現することに目標があった. この一年間の研究開発作業の結果, 光ディスクによる画像データベースを併置したF.T.年代測定用画像処理システムが世界最初のものとして完成した(論文1). この画像処理システムによって, マンーマシン対話処理により高度に自動化され高能率な計測が実現したのみならず, 従来不可能であったすべてのF.T.の顕微鏡画像について3次元的なベクトル値(位置, 長さ, 方向)を計ることが可能となった. このことは様々な岩石の地質年代を定量的に計測できると同時に, その期間における岩石の熱環境をも知ることが可能になる. システムの評定作業に欠くことのできない世界の標準年代試料を現在収集中で, 米国・オーストラリアで開発された12種類の標準鉱物(ジルコン・アパタイト,スフェイン鉱物)を既に入手した. また, 日本の火山岩より5種(ジルコン鉱物)および深成岩より3種(ジルコン鉱物)を準備中である. これらの幾つかは, 4月の日本地質学会で発表する予定である. また, 9月の国際会議にも発表申し込み中である. 次年度以降では, これら標準試料によるシステムの評定作業と並行して, 西日本の中生代白亜気以降の内帯・外帯の火成岩類や堆積岩中の凝灰岩のF.T.年代の計測を始める予定である.
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