研究概要 |
研究の進展状況および新たに得られた知見. 1)ECRプラズマ発生装置から引きだされた励起種(炭化水素系のラディカルおよび水素ラディカル)を使用し, 良質の結晶ダイヤモンド薄膜を従来法の数倍の大面積(80mm×80mm)にて成膜可能とした. (Jpn.J.Appl.Phys.26,1987.L1032)また,基板を正バイアス(〜+150V)に保った状態,すなわち電子捕集を行いながら成膜すると1Torr以下の気圧でも良質のダイヤモンドが形成できることがわかった. この条件は従来法の1/50以下の気圧であり,放電の安定化, 成膜領域の拡大化(100mm×100mm以上)が実現できる. (論文準備中)さらに,通常使用しているCH.ナ_<4.ニ>以外に,COからもダイヤモンドが高速(CH.ナ_<4.ニ>の数倍)で形成することがわかった. (論文準備中) 2)Si基板上でのダイヤモンドの核形成および成長を検討するため,透過電子顕微鏡によるダイヤモンドーSi界面の観察に初めて成功し,核形成場所および結晶成長機構に関する知見を得た. (Jpn.J.Appl.Phys.26,1987.L1903) 3)ダイヤモンド薄膜の光物性をカソードルミネッセンス法で評価した. その結果, ダイヤモンド薄膜は可視領域の緑色((2.45eV)および青色(2.8eV)に強い発光ピークをもつことがわかった. この発光は高圧合成ダイヤモンドにみられる"バンドA"という発光に分類され,ドナー(窒素)とアクセプター(ホウ素)間の再結合による発光過程で説明される, 発光領域は{100}セクターが{111}セクターとくらべ非常に発光強度が高いことがわかった. 薄膜からの発光は今後の発光デバイスへの応用という点で重要な知見である. (Jpn.J.Ahpl.Phys.27 1988掲載予定) 以上のようにECRプラズマを利用した良質結晶ダイヤモンドの成膜は, 期待どおりの成果をみており, またそれに伴う評価技術も進展し,結晶成長過程や光物性に関し新知見が得られた.
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