研究概要 |
本研究の今年度の目的は,室温でも強い赤色発光を示すC_dI_nG_aS_4(以下Cd_1と記す)と,われわれが新たに見いだしたCd_xI_nG_aS_5,Cd_3I_nG_aS_6(以下Cd_2,Cd_3と記す)という強い緑色発光を示す新物質について,その金相学的,結晶学的位置付けを行うことと,その緑色発光の,機構を解明することにあった. これらの物質はCd_1ーCdS系(Cd_xI_nG_aS_<3+2>系)の中の相として考えることができるので,このCd_x系について融点,密度,格子定数等をxの関数として測定した. その結果,融点,密度,格子定数はXによらず,ほぼ一定であることがわかった. Cd_x系の状態図を作る手始めとして,Cd_3を種種の温度から急冷して作りDTA,X線回折等による調べた結果,約800℃以下においてCd_3の相が安定であることがわかった(融点は約900℃). 緑色発光の強度はXが1〜3の間ではXの増加と共に増大する. ラウェパターンを見ると緑色発光の強いものほどdiffuseになっているので,Xの増加と共にC軸方向の周期性の乱れ,すなわち積層欠陥が増加するものと思われる. これが発光機構とどのように関係しているのかは今後の課題である. 從来のCd_3結晶はすべてノルマルフリージング法によって作製したが,大きな単結晶を得る目的ゐ,ブリッジマン法を試みた. その結果從来よりも大きな単結晶から成るインゴットが得られた. その中の一部で緑色発光だけを示す試射が得られた(從来のCd_3は緑色発光と共に長波長反に赤色バンドを伴なう). Cd_x系の密度測定の結果を結晶構造のコンピュータ・シュミレーションの結果と組み合わせることにより,Cd_9I_nG_aS_<12>という物質の存在が推論された. そこでこの組成で結晶作成を試みたところ, Cd.ナ_<3.ニ>よりも結晶性の良い物質が得られた. この物質は緑色発光は示さないが,電気抵抗率がCd_1やCd_3に比べて小さいという特徴を持つている.
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