研究概要 |
一端が固定され,他端に集中質量を有する薄肉円形閉断面ブームが,断面に関して任意角度をなす方向からふく射加熱を受ける場合に発生する熱誘起曲げ振動について,主としてその安定性に注目して理論解析を行った. 系全体を先端たわみで表した1自由度系で近似した場合の熱と弾性との連成を考慮した基礎方程式を導出し,系の挙動が,1)減衰化,2)振動系と熱系との特性時間の比,3)幾何学量や外来照射量によって決まるパラメータ,4)ブーム軸とふく射加熱方向とのなす角度の合計四つの無次元パラメータに依存することを示した. これらの各無次元パラメータが系の動的安定性に及ぼす影響を明らかにするため,平衝点である静たわみ位置まわりでの微小振動に関して安定性解析を行い, 動的な不安定領域と安定領域との境界を与える条件式を求め,不安定領域をパラメータ平面上に示した. また,安定,中立,不安定の各領域での代表的な応答を求め,安定垂界との対応を確認した. 以上の理論解析の結果,動的安定性に関する主要な知見として基本的に集中質量が取り付けられているブーム先端がふく射加熱源と反対側と向くとき不安定で加熱源側を向くとき安定であることが明らかになった. これらの解析結果を検証するための実験では,まず不安振動を研究室規模の実験で発生させるためのパラメータ推定を行った. 板厚50μmのベリリウム銅板より加工した直径10mm,長さ150ー1500mm程度の円形薄肉断面ブーム供試体を赤外線加熱ランプによる平行なふく射加熱場の中に置いて実験を行った結果,不安定振動を発生させるにはブーム軸とふく射加熱場のなす角度について強い制限の存在することが明らかになった. またブーム,先端質量およびそれらの取り付け部からなる系の構造減衰も振動の安定性に大きな影響を及ぼすので,これらの点もあわせて考慮し,平行で一様なふく射加熱を行うことができるような装置の仕様を検討した.
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