研究概要 |
本研究は機械・構造物の表面の一部分を観測して全表面中の最大き裂長さを推定し,それをもとに余寿命評価を行う手法の高精度化を目的としたものである. 従来のこの種の手法では一種の平均寿命の予測にとどまっているのに対し,本研究では安全性・信頼性の上から重要な低破壊確率(高信頼度)領域の寿命予測を目指していること,ならびに微小き裂の観測に画像処理技術を援用することが本研究の特色としてあげられる. 本年度はまず,低破壊確率領域の余寿命評価手法の理論的構築を行った. 表面の一部の観測から全表面中の最大き裂長さを推定するには極値統計解析が有用であるが,従来の再帰期間を用いる方法のままでは平均的な寿命しか予測できない. そこで再帰期間の概念を拡張して,修正再帰期間という新しい概念を新たにつくり,これを用いて寿命予測を行う方法を構築した. この新しい方法を用いることにより,低破壊確率領域の余寿命を評価することが可能となる. 次に,疲労微小き裂の画像処理を実施した. そのために日本アビオニクス(株)の画像解析装置とPC9801V×41から成る画像処理システムを構成した. 一方炭素鋼S25Cの回転曲げ腐食疲労試験を行って試験片表面に多数の微小き裂を発生させて,上記の画像処理システムにより試験片表面の観測を行った. その結果,通常の微分処理と二値化のかわりに局所自動二値化を行うなど画像処理手順を工夫することにより, 数十μm程度の微小き裂まで計測できるようになり, 余寿命評価に画像処理が使えることを確認できた. 以上のように,昭和62年度の研究計画をほぼ予定通りに実施し,目標の段階まで研究を進めることができた. 昭和63年度はステンレス鋼の高温疲労試験を行い, 上述の余寿命評価手法と画像処理技術を用いて,高温疲労余寿命評価に進む予定である.
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