研究概要 |
現在の電子産業を支えているのは砥粒加工であり,シリコンウェハを超精密に仕上げるために遊離砥粒を用いたフロートポリシングやEEMが利用されている. ところが,これらの加工は高い精度の表面あらさや平面度を得ることができるが,加工能率が低いため高能率化が急務といえる. 一方,遊離砥粒による加工技術の一つに噴射加工法があり,細いノズルから砥粒を混入した水を放出するウォータジェット加工が難削材やセラミックスの切断に適用されている. この加工法の問題点は,噴射した物貭を制御しておらず飛散させているため,切断のように工作物の厚さ方向に対する加工にしか応用されていないことである. そこで,本研究では噴射した砥粒をノズル外周ですぐに吸引し回収することにより,被削材の表面に対して砥粒を作用させ,局部的に表面の微細加工を実現する新しい加工技術の開発を行なう.すなわち,噴射ノズルの外側に砥粒回収用吸引ノズルを設け,これを二次元的に移動しながら表面を仕上げる方法である. この砥粒回収方式超微細表面噴射加工の実用化を行うために,実験的研究を行った結果,以下に示す知見が得られた. 1.噴射遊離砥粒の加工メカニズムについて解明を行い,遊離砥粒の運動状態と加工量の関係を明らかにした. 2.遊離砥粒と空気の固気二相流の流体解析を試み,流体挙動の安定性について興味深い新しい知見が多数得られた. 3.噴射ノズルと被削材表面との間隔を一定に保つことができる装置を試作し実際の加工を行った結果,本方式の噴射加工が超精密な加工に適用できることが確認された. 以上のように,有益な成果が挙げられ始めていることから,本研究を継続することは工学的に意義深いといえる.
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