研究概要 |
温度レベルが300℃以下の従来十分活用されていなかった熱エネルギー資源を有効利用する新たなヒートポンプ, 発電機器の開発をめざし, 本研究課題では, これらのシステムの作動媒体として利用することが可能であると考えられる流体の熱物性値を明らかにすることを目的としている. 本年度の研究成果を以下にまとめる. 1.上記流体の広範囲の熱力学性質を精度良く推算することを目的として, 摂動型状態方程式を基礎とする一般化状態方程式の作成を試みた. まず, 基準項における第2ビリアル系数および排除体積の各相関式を一般化し, 高次の摂動項に関しては, 物質依存性のある係数間の関係を見い出し経験的に相関することにより一般化した. 本一般化式により純冷媒の臨界密度以下の密度領域の熱力学性質を推算することが可能である. 2.流体の定圧比熱測定装置に, 新たに開発した自動質量流量測定装置を加え, 高温用ヒートポンプの作動流体として適するフロン系冷媒R114の定圧比熱の精密測定を行なった. 測定温度範囲は310〜340K, 圧力範囲1.5〜2.5MPaであり, 8点の定圧比熱を決定することができた. 新たな自動質量流量測定装置を加えることにより, 測定精度を±1.1%から ±0.4%以下に飛躍的に向上させることができた. 3.純冷媒の熱力学性質をできる限り少ない実測値情報からできる限り簡単に, 一方, 高精度に導く計算法を開発し, ヒートポンプサイクルの性能解析を行なった. この方法は, 気相域の相関式としてSRK式を用い, これに飽和液体密度式と飽和蒸気圧力式を組み合わせることにより, 実用上重要な範囲の冷媒の気液共存状態および過熱蒸気域の熱力学性質を導くものである. この方法を用いて10種類の冷媒の熱力学線図を作成し, ヒートポンプの成績係数を比較した.
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