研究概要 |
電力系統における雷撃事故を解明するためには, 鉄塔を含めた送電系統における雷サージ伝搬特性を解明しておくことが重要である. さて, 従来の研究では鉄塔と架空地線の間には相互結合はないものと考えられてきたが, 本研究ではこの両者の相互結合に注目しながら, 鉄塔単体および鉄塔ー架空地線系の雷サージ伝搬特性を実験ならびに理論的解析の両面から追求し, 雷害事故原因を解明した. (1)鉄塔単体のサージ伝搬特性の解明 完全大地面上の送電鉄塔のモデルとして, 面積7×10m^2の薄板鉄板上に垂直に立てた5mmφ,長さ3mの黄銅製中空円筒のサージインピーダンスおよび伝搬速度を測定した. 測定の結果として導体中のサージ伝搬速度は, ほぼ光速に等しくなっていることが明らかとなった. また, 垂直導体に対する等価サージインピーダンスモデルを導いてみた. 次にこのサージインピーダンスモデルを用いれば塔頂電位の立上り部のみならず反射波到達後の電位波形も実測に非常に良く一致することを示し, このモデルの正統性を証明した. 更に印加線電流の塔頂電位に及ぼす影響, 線電流近似の妥当性, 等についても定量的に検討を行った. (2)鉄塔ー架空地線系のサージ伝搬特性の解明 (1)と同様の測定系において, 垂直導体に電流を印加した時の電圧測定線誘導電流の測定を行った. すなわち, この場合は電圧測定線は実際の系における架空地線と考えられる. 測定の結果, 垂直導体側に電流を流すことによって水平導体にかなりの電流(最大20%程度)が流れることが判明し, 従来無視されてきた, この両者の間の相互結合がかなり大きなものであることが判明した. これについては次年度更に詳しく検討する予定である.
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