本研究は、DCUHV送電設備におけるイオン流場と空間電荷を検知してその制御法を検討することにより、イオン流帯電現象の防御法を検討するとともに、イオン流帯電現象そのものを発生させない洞道ガス絶縁送電と呼ばれる新しい送電方式の確立を目的として、昭和62年度と昭和63年度の2年間で完結するように計画された。 昭和62年度には、それまでに得ていた実験室規模の設備によるイオン流帯電現象に関する実験データを実規模の設備に対して適用する場合の基礎になるイオン流場の相似則を見い出すとともに、ガス絶縁における絶縁上の最弱点部の破壊特性を調べた。 昭和63年度は、昭和62年度に得たデータを基に、ガス絶縁機器のスペーサにおける耐電圧向上法を中心に実験と理論の両面から検討した。その結果(1)スペーサの縁絶上の弱点は、金属粒子が電極近傍のスペーサ表面に付着したときに生じることを見い出し、耐電圧の向上はその部分の沿面電界を低減することによって行える。(2)沿面電界の制御法には電極形質を変える方法と沿面形状を変える2つの方法が考えられ、種々の電極形状による実験から、埋込電極法と凹電極法が有効である。(3)ガス圧の高い領域では沿面距離が耐電圧と密接に関係しており、特にスペーサ上にリブを設け、リブ高さを高くすることが耐電圧向上に有効である。(4)ガス(SF_6)圧が1〜4気圧と比較的低い場合には、粒子の付着位置が耐電圧の変化をもたらし、従って特定の位置に粒子を付着させないようなスペーサ形状の開発が望ましい、ことなどが判った。さらに流し写存による放電進展過程の観測から、交流破壊における粒子の放電トリガー効果、放電柱の導電率上昇過程における電離波の役割などを解明できた。また、スペーサ沿面上の空間電荷量の検討から、特にSF_6ガス中では空気中に比べ、破壊に対する空間電荷効果が大きいことを明らかにした。
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