研究概要 |
真空管ICは, 現在の半導体製造技術を用いて, 同一基板上にミクロンオーダの微小真空管を集積化しようとするもので, 高速性, 耐放射線性, 耐温度性の点で半導体ICより優れた特性の素子を開発し,宇宙や原子炉等の過酷な環境下での制御等の用途に供しようとするものである. このため, 真空管の弱点であった熱陰極にかわる高性能の微小陰極の開発は不可欠である. 本研究は, 真空管ICへの用途として最も適していると思われる微小トンネル陰極の開発, 高耐電圧電極の作成を通して, 真空管ICの基礎技術を確立しようとするもので, 本年度の研究実施計画は下記の3項目である. 1.微小トンネル陰極の作成 2.高耐電圧絶縁膜の作成 3.真空管ICの基本設計 1は本研究の主要部分をしめるもので, 従来のトンネル陰極の開発研究が不成功に終った原因は, トンネル陰極を構成する超薄膜絶縁体に良質なものが得られなかったためである. そこで, 本研究では, 単結晶絶縁薄膜を育成するための分子層エピタキシャル装置を試作し, nーSi(100)基板上にdーAl_2O_3の結晶成長を行った. その結果, 基板温度750℃近辺でSi上への単結晶Al.ナ_<2.ニ>O.ナ_<3.ニ>の成長に初めて成功した. 今後, さらに成長条件の最適化を行うと共に, トンネル陰極の試作を行う予定である. 2に関しては, 真空管ICはその利点を引き出すため半導体ICに比べて高電圧動作となるため高耐電圧絶縁薄膜の形成技術を確立しようとするものである. このため, Si基板の化学処理と高周波エッチング, スパッタリングを組み合わせた方法により, SiO_2の堆積を行い, 絶縁耐圧5×10^6V/cmを得た, 3に関しては, 真空管ICの基本設計に供するべく, 電極構造論に基づくビームコードの関発を行った.
|