研究概要 |
1.各種軟貭磁性材料の高周波での素材の磁気特性,特に磁気損失の測定法を検討した. アモルファス薄帯のように薄くて広がりのある素材の測定は限界周波数を持つことが分かり,それらの測定法を明確にした. 2.從来既知とされていたソフトフェライトの超低周波磁気損失に,金属と同じ異常損失があることを見出し,これを測定して熱ゆらぎ磁気余効に由来することを明らかにした. これは從来の残留損失を明らかにしたことでもあり,高周波損失評価の基礎を固めることができた. この結果は欧州軟貭磁性材料会議で発表した. 3.鉄系アモルファス薄帯の熱処理による脆さと磁気特性の変化を検討し,商用品に対して,それぞれの最適熱処理系件を求めた. MetgCas2605Sー2については内部ひずみのみを除去して構造緩和を生起しない状態が良好で,この熱処理時間は大変短かい. 又,この系統の材料に応力を印加した場合の磁気損失変化を測定し,磁化方向の張力以外の応力は磁気弾性エネルギー上全て損失増加の方向に働くことを明らかにした. 高周波損失も磁壁移動で生じるため,磁区細分化が不可欠であることを示した. これらの結果は国際応用磁気会議と欧州軟貭磁性材料会議に発表した. 4.方形波,PWM波による励磁に伴なう電気鉄移の磁気特性を測定した. 基本は低周波でも多量の高調波成分が重畳しているため磁化過程は複雑となると考えられているが,実際には磁化速度が一定の励磁となるため,磁化過程はむしろ単純で,磁区構造が明らかになれば損失の計算も可能である. 現在,この測定結果をまとめつつある. 5.磁気ひずみの測定は光学的方法によって作製中であり,来年度において磁区観察と共に磁気ひずみを測定し,磁気損失の機構に迫る予定である.
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