研究概要 |
1.表面磁区構造の観察,動磁区観察の試み 本課題については磁区の大きい高配向性けい素鋼板を対象に実験を行った。極端な研磨を重ねなくても、磁区の大きなものについてはカー効果での磁区観察は可能であった。しかし、磁区が細かい場合や動的磁区(静的な場合に比して細分化する)については、画素の分離能が不足して観察が成功するには至らなかった。可視化に関する手掛りは得られた。 2.高周波磁気ひずみの測定 高周波での磁気ひずみはストレーンゲージを用いることによって測定し、形状共鳴が大きな影響を持つことを示した。このほか、光学的に測定することを企画したが、測定装置を構築したに止まり、実際の測定を実施するには至らなかった。 3.磁気損失の起因の検討 磁化速度を一定に保って磁化する場合、何れの軟質磁性材料にあっても正弦波励磁における場合より磁気損失は少ないことを見出した。計算すると方形波のうず電流損失は正弦波のそれの81%にしかならないため、当然それだけの損失減少が期待される。しかし、実際には、計算のうず電流損失が存在するとすれば、全損失から差引いた残りのヒステリンス損失は周波数によって変化することになる。いずれにしても、磁化過程の周波数による変化に伴ない磁気損失機構も変化する。 一定磁化速度で磁化する途上で何度か磁化の進行を止めると、損失は増大したり減少したりする。即ち、磁化を一定値に保っているだけで損失が変化するという不思議な現象が見られる。この損失は磁化進行が停止した瞬間に生じるものと緩和現象を伴なうものとに分かれることが明らかとなった。これらは全く新らしい知見である。このように磁化過程は磁化速度に支配されていて、磁気損失も磁化モードによって変ることが明確になった。
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