軟質磁性材料を数MHzまでの周波数帯で高磁束密度に励磁した際の磁気損失を測定し、その起因を検討する一連の実験を行ない、以下の成果を得た。 アモルファス磁性薄帯の高周波単板試験器を完成し、200RHzまでの特性評価が可能となった。それ以上の周波数では、単板ではなく他の材料と同様に小形のリングとして測定する必要がある。高周波の磁気損失は磁気ひずみによる形状共鳴を除いては低周波での磁気損失と変った振舞はしないが、ヒステリシス損失が周波数依存性を持つことが確認された。 フェライトの超低周波損失は金属系と同様に熱ゆらぎ磁気余効に基づく異常損失が顕著であることが分かった。従って、フェライトにも他の軟質材料と同じ損失機構が働いていると結論でき、軟質磁性材料の磁気損失は一括して論じることができると言える。 アモルファス薄帯は熱処理によって当然高周波特性も変化するが、その際透磁率は低下するにもかかわらず低損失化する熱処理過程があることを見出した。低損失化は磁気異方性や結晶化と無関係に起こり、磁壁の動き方のみによって生じると思われる。この点、今後検討を要する問題である。 磁化速度を一定にすると、磁気損失は基準である正弦波状の場合より低下する。低下率から損失分離が可能であるが、その分離によると磁化過程は周波数に依存して連続的に変化することが知られる。磁化変化の途上で、一定磁化に止めておく過程を入れると、止めた磁化状態に応じて磁気損失は増す場合と減じる場合とが生じる。この変化過程を解析して、動的磁区構造と静的磁区構造との間に差があり、その変換には時間とエネルギーを要することが分かった。この損失の量的な解析は今後に残された大きな問題である。
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