研究概要 |
純粋石英ガラスは, その製造方法により耐放射線特性や水素拡散に対する特性等が異なる. 従来はガラス中に含まれるOH基含有量の依存性が論議の中心であったが,本研究によって酸素含有量(すなわちSiO_2ネットワーク中のケイ素と酸素のノンストイキオメトリ)がガラスの特性に大きな影響をおよぼしていることを明らかにした. 酸素過多のガラスにはSiーOーOーSiなるパーオキシ・リンケージが存在し, これが325nmの光吸収帯の原因であることを示した. このパーオキシ・リンケージは放射線誘起あるいは線引き誘起パーオキシ・ラジカル(SiーOーO・)および非架橋酸素ラジカル(SiーO・)のプリカーサであり, また水素処理によって大きく生成する1.39μm帯のプリカーサであることを明らかにした. また, 水素処理, 放射線照射, 熱処理の組み合せによって1.45μm帯および1.44μm帯が酸素過多のガラスのみに生成することが判明した. 酸素不足のガラスには5.0eVおよび7.6eVに光吸収帯が存在する. この2つの吸収帯の原因はいずれもSiーSiなる酸素空孔に帰属され, 5.0eVは1重項→3重項の禁制遷移であり, 7.6eVは1重項→1重項の遷移であることを光吸収, 光ルミネッセンス, 分子軌道法によるコンピュータシ レーションによって明らかにした. また5.0eV付近にはピーク波長および半値幅の異なる2種類の光吸収帯があり, 光ルミネッセンスや加熱加圧ガス処理に対する特性の違いなどから2つの吸収帯はまったく異なる原因によるものであり, ガラスの製造法に依存するものであることを示した.
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