研究概要 |
近年、エキシマレーザーの普及にともなってその光導波路用材料として純粋石英ガラスが注目されている。しかしながら、ガラスの製造法によってはKrFの発振波長248nmと一致する吸収帯(B_2バンド)が有り、またB_2バンドがないサンプルにおいてもレーザー照射が続くと4.8eVに吸収帯が生成すると同時に、この波長での励起によって1.9eVにルミネッセンスが観測された。レーザーリングラフィなどのレーザーの応用を実現するためには1.9eVルミネッセンスの原因を解明し、抑制する必要がある。1.9eV光ルミネッセンスの励起帯は複数あり、現在までに2eV,4.8eV,7.6eVが報告されている。Skujaらは、中性子線を照射したガラスにみられる2eV,4.8eV吸収帯、1.9eVルミネッセンスをいずれもNBOHC(〓Si-O・)に帰属している。Devineらも5eVエキシマレーザー照射によってSuprasilWに生成する4.8eV吸収帯とNBOHCは同様の生成、及び熱アニール特性を示すことから、やはり4.8eV吸収帯がNBOHCによるものと報告している。しかし、Statisらは7.9eVのF_2エキシマレーザーをSuprasilWに照射し続けると4.8eV吸収帯と1.9eVルミネッセンス(この場合は3.8eVのN_2レーザー励起)の生成特性が異なるため、両者は別々の欠陥に起因するものであると報告した。このように4.8eV吸収帯、1.9eVルミネッセンスの原因はおろか、両者が同一の欠陥によるものであることか否かさえ明らかになっていない。 4.8eV励起によって発光する1.9eVルミネッセンスの波長特性、時間特性、及びESRの結果、4.8eV吸収帯の原因となる欠陥はNBOHCにエネルギー再分配する供与体であるため、NBOHCと密接な関係がある欠陥であることが明らかになった。現在のところ、4.8eV吸収帯の原因は〓Si-O^-に起因するものと考えられる。また、エネルギー供与体である4.8eV吸収帯とエネルギーの受容体であるNBOHCが同時に生成しげ初めて、4.8eV励起1.9eVルミネッセンスが生じることが明らかになり、不明な点が多かった4.8eV吸収帯と1.9eVルミネッセンスの関係が解明された。
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